2010/10/05

客観的評価

演奏会を開く以上は、観客に喜んでもらうことが成功を計る指標であることは間違いない。しかしアマチュアの最大の権利として「自己満足」できればそれでよいとも言える。学生オオーケストラでは特に、自分の学年が演奏会で燃え尽きることをゴールと考えがちである。自分も学生時代はそうであった。果たしてそれでいいのか。少し考えてみたい。



例えば、あるオーケストラの定期演奏会の観客が500人であったとする。ただし、ここでいう観客にはオーケストラ奏者の家族、友人、知人は含めず、いわゆる一般の観客のみとする。このうちの半分が、演奏会を聞いたあと、次回の定期演奏会には来ようとは思わなかったとする。次の年の演奏会でも500人のうち半分が同様に、その次の演奏会には来ようと思わなかったとする。これを繰り返していくと、そのオーケストラは、観客になると期待できる地域住民の母集団を演奏会をする度に小さくしていっているのである。つまり、ホールを満席にすることが、年を追うごとにますます難しくなるということである。あなたの地域の人口とオーケストラの数を比較してみればよい。あなたのオーケストラのファンとなりうる潜在人口はそんなに大きくはない。その潜在人口をどんどん減らしていくことになるのである。つまりマーケットシェアを失っていくことである。この仮説から、観客の多くが「また次回も聴きに来たい」と思わなければ、成功だとはいえないのではないだろうか。

アマチュア、特に学生では、その現実になかなか気づきにくい。それは初めに指摘した「自己満足」と「燃え尽き」のためである。また、日本では演奏がどうであろうと、拍手はそれなりにいただけるし、アンコールも義理であろうが必ず求められる。つまり演奏会場の雰囲気だけでは、観客にどれだけ感動を与えたか、次の演奏会への期待を与えたかは計りにくい。ではどうすればよいか。

多くのアマチュアの演奏会では観客にアンケートを渡している。次につなげるために非常に大切なことである。問題はそのサンプリング方法そのものと集計結果を分析し次へつなげているか、である。パンフレット全部数にアンケート用紙を挟みこみ、「アンケートにご協力ください」とすると、確かに多くの枚数を回収できるかもしれない。しかし、全員からの回答を期待できない以上、それが観客全体からの統計的に正しいサンプリング方法であるかは、はなはだ疑問である。なぜなら、好意的に感じた観客ほどアンケートに回答し、演奏会を気に入らなかった人ほどそのまま帰ってしまうことが予測できるからである。ではどうするか。パンフレット全体のうちの例えば10%にアンケート用紙をいれておき、確実に答えてもらうようなメッセージを書いておく。あるいはある座席に座った人にアンケート用紙を手渡し、回答を要請するなど、ランダムなサンプリングの方法はある。次にアンケートの集計という点。少なくともこれまでいくつかのアマチュアオーケストラに関わった限りでは、集計し次へのアクションプランを起こすという例はなかった。集計する意味のあるように、「どう思ったか」という自由コメント形式の質問だけでなく、ぜひとも5段階評価などで、感動したか、気に入ったか、良かったか、上手だったか、心地よかったか、次も来ると思うか、などの質問をすべきだと思う。

そしてもうひとつ重要なポイントは、回答者がどういう人かということ。回答者がオーケストラの誰かの知り合いや家族である場合とそうでない場合を区別して集計する必要がある。全体からの無作為抽出での集計結果、知り合いや家族での集計結果、それ以外の一般観客での集計結果、それぞれを比べてみる必要がある。そうすれば、自己満足だけでなく、観客に感動を伝えられているかが白日の下に晒される。知り合いや家族は演奏会に至る過程、つまり練習の苦労やがんばりなどを見聞きしているはずで、その予備知識が評価に影響するが、一般観客は演奏会そのものを評価する。

このようにアンケートを有効活用し、観客に喜んでもらうことを「演奏会成功の定義」とする習慣を身につけてほしい。それはある意味、勝つことを目標とするコンクールでの演奏と似ている。客観的評価は重要である。そしてファンを減らさないよう、むしろ増やすように目標を置き、結果を残すことが、後輩への最大の置き土産となるであろう。

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