2011/08/25

指揮棒の選び方

いきなりこのページに来た方、もしまだでしたらまずは「指揮棒を持つか持たないか」を読んでほしい。

では、指揮棒を持つと決めたならどういう棒を選ぶべきか。長さ、太さ、材質、色、握り部分の大きさや形や材質などいろいろとあるが、最も重要なことは重心位置である。ただし、これが最も理想的だという重心位置はない。それは、指揮者の技量や音楽的成熟度などによって決まってくると思っている。

概して、経験の浅いアマチュアの学生指揮者や若い指揮者は、重心位置がなるべく握り位置に近い棒を持つのが良い。なぜならば、そうすることによって、単純に手や腕の動きが拡大されるだけで、指揮棒に振り回されることがないからである。重心が握り位置より先端側に遠ければ遠いほど、文字通り指揮棒に振り回される、つまりは棒の先端をコントロールできないという羽目になる。私自身大学3年のときには、ピックボーイの38cmグラスファイバーのコルクを取ったものの根元に、ゴルフクラブのヘッドに貼るバランス用鉛テープを巻いて、握ったときに丁度人差し指の上で釣り合うようにしていた。もう一点これの良い点は、グラスファイバーの軽すぎる棒をかなり重くできることである。こうすることで、指先や握りで指揮棒だけをコントロールすることは難しくはなるが、見やすい指揮になることは間違いない。一つ注意しておきたいのは、ピックボーイのカーボングラファイトに握り部分がローズフッドやエボニーなどの比重の高い木を使ったもの。これらのほとんどが、重心が握り位置より後ろ側になる。「高級品」を自負する以外、指揮棒としての実用性はゼロである。

技術的・音楽的成熟度から、こういった重心位置の棒での表現力に限界を感じるようになれば、普通に市販されているバランスのものを使える段階である。ただし、ここで注意しておくべきことは、やはりグラスファイバーやカーボングラファイトのものは軽すぎる。耐久性はあるのだが。おすすめはやはり木製で、ある程度の重さのあるものがよい。軽すぎるものは、棒の重みに任せた先端のコントロールがしづらい。ある程度重いものであれば、訓練を要するが、棒の重みに任せた表現が可能となる。これは弦楽器で、弓の重みに任せて音を出すのとまったく同じ原理である。決して棒の先端をコントロールしようとして強く握ってはいけない。棒の先端が自ら図形を動くかのごとく軽く握るべきで、それでもコントロールできる重さとバランスが大切である。ここでも、握り部分が木製のものはあまり推奨できない。やはりコルクのほうがバランス的に良い。下の写真でバランス位置を示した。

左が45cm木製、重心が先端に近く、棒の重みを利用した指揮ができるが、コントロールは難しい。私もしばらく練習をサボっていると使いこなせない。そういうときは中央の45cmグラスファイバー製を使う。重心がやや握り位置に近いし、おまけに軽い。右が41cm木の丸棒で、普段室内楽の指揮に使用しているもの。ごらんの通り重心は中央であるが、重くもなく軽くもなく、非常に使いやすい。

指揮棒の長さについては、これはもう好みの問題である。傾向としては、小編成の室内楽などでは短い棒のほうが良く、大編成になれば長い棒のほうが良い。私の場合、フルオケを振るときは45cm、室内楽では38cmから41cmくらいであるが、私の使う長さはどちらかというと長いほうである。指揮棒の太さについては、ある程度の太さがあったほうが奏者の側からは見やすい。グラスファイバーやカーボングラファイト製は細くて見づらい。この理由からもやはり木製のほうが好ましい。

握り部分の材質については、何度も指摘しているがやはりコルクに限る。木製のものは概してバランスがよくない。握り部分の大きさと形については、好みの問題ではあるが、余り大きく長いものは人差し指の第一間接に乗せたときに邪魔になる傾向があるので気をつけたほうが良い。自分の親指の長さ・太さ程度のものが使いやすい。球状のものはコルクを指先で握って棒の先端をコントロールするには向いているが、これはかなり高度なテクニックを要する。プロの指揮者でもこれをやる人は、私の知る範囲では二人しかいない。

指揮棒の色は、もちろん白が良いが、気をつけなくてはならないのが。奏者から見た背景である。つまり指揮者の着ている服の色、後ろの壁の色、あるいは窓から外が見えるならその背景の色、明るさである。私の出身大学のプレハブの第二音楽室は指揮者の背中側に窓越しに運動場が見え、グラスファイバーの白い指揮棒なんかは、管楽器からはほとんど見えない。

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