2011/09/16

習うこと、学ぶこと

プロの音楽家にレッスンを受けることが、楽器上達への近道であることは、ほとんどの場合においてまず間違いない。しかし、そうではない場合もあるので、これからレッスンを受けようと思っている人は、自らを振り返り、以下のような勘違いをしていないか、よく考えてみてほしい。「自分で練習するより、習ったほうが楽に、簡単に、早く上達するだろう。」あるいは「自分の演奏は今ひとつ音楽的でないから、習ったらもっと音楽的になるだろう。」というような考えだけでレッスンについても、その効果は疑問である。漠然と「自分は下手だ」と自覚しているだけで、人から習っても、決して身につくものではない。それまでに自ら徹底的な研究・練習を繰り返し、壁にぶちあたり、自分の何が問題なのかをよく考え、それに挑戦し、それでも納得がいかない場合にのみ、教えてもらったことが、暗闇に差し込む一条の光のように思え、それが身につくのである。自らの努力なしに教えてもらって、その場でだけ分かってできるようになっても、それを維持していくことはまず無理である。それは、外国語を習得するのに、自らを日本語の通じない環境に置くことをせず、常に辞書に頼るようなものであり、自分で1冊の本を読むことをせず、人が書いた要約を読んで、1冊読んだ気になっているのと同じことである。なお、ここで言及していることは、プロの音楽家に習う場合のみならず、先輩に教えてもらう場合も同じであるし、数学や化学などありとあらゆる学問を習得するについても同様である。

では具体的にどうやってレッスンを最大限に有効利用するか。レッスンの最大の利点は先生やプロの音楽家の弾くのを目の前で見聞き、それを真似ることではないだろうか。つまりレッスンを受けることや自分より上手な人と一緒にアンサンブルなどを楽しみながら、真似ること。それに多くの時間を費やすこと。それは赤ちゃんが言葉を習得するプロセスと同じと考えてよい。

赤ちゃんが言葉を覚えるプロセスは、口の動きをじっと観察し、何度も何度も発音を真似る。個人差はあるが3歳から6歳くらいで大人に近い発音、文法が確立される。赤ちゃんは常に大人に囲まれ、つねに言葉を聞いている。これは、常にプロの音楽家に囲まれているアマチュアと同じ状態である。そして何度も何度も同じ言葉を話し、少しずつ発音がきれいになってゆく。これは、大人の発音と自分の発音を比較し修正していくプロセスであり、言葉を発するのに関連するすべての筋肉の動きの制御方法を身につけてゆくという、ものすごく複雑で繊細なプロセスである。筋肉の制御レベルの複雑度からすれば、もしかすると楽器を演奏するよりも、よほど複雑かもしれない。

これを音楽に応用すると、自分より上手な人の音を身近で、生で、見て、聞き、真似る時間をできるだけ多く作ること。自分の音をよく分析的に聞き、上手な人と何がどう違うのか、常に意識し修正すること。筋肉のトレーニングは、何度も何度も同じことを繰り返し、文字通り体に覚えさせること。これは耳から大脳、大脳から制御する筋肉という回り道の神経伝達プロセスをショートさせ、脊髄反射ができるようになるということ。神経を鍛えることは、年齢とは関係ない。子供であろうが80歳を超えていようが、やれば同じだけ改善される。そう、まさに赤ちゃんのように見よう見まね、聞いて真似るのである。なお、これは外国語を習得することにおいても同じである。英語では、とにかくやってみてから修正していくことを"play by ears"と言う。楽器もまさに耳で弾くかのごとく自分の音を聞くこと、人の音を聞くことが大切である。赤ちゃんのように。

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