2014/01/23

フレージング〜日本語と西洋音楽

日本語を母国語とする私たちが気をつけなければならない第二点は、フレージングである。日本人は、大事なことは最後に言い、最後まで待って理解する文化であるが、西洋では真逆で、大事なことは最初に言う文化である。

日本語は文を最後まで聞いて初めて意味が分かる。つまり、「〜しようと思っている」のか「〜した」のか「〜しない」のか「〜できなかった」のか、など。この考え方のまま英語で話すとまず相手はイライラする(よくある日本人英語)。欧米の言葉に共通するのは、これら助動詞は文の最初に出てくる。英語で言えばそれぞれ、「plan to ~」「did」「will not」「couldn't」である。例えば「今日、AさんとBへ行って、CをしてDを見てEを買って楽しかったけど疲れた」という話をするとする。聞き手にとって、最後が「疲れた」なのか「楽しかった」なのかが重要であり、それによって返答が違ってくる。英語だと、「I was tired because ~」なのか「I had good day today ~」で始まるので、聞く態度も変わってくる。

また、主語がなくても前後の状況やボディーランゲージで主語が誰を指しているのか予測する文化(high context culture)だ [1]。欧州言語ではこれはまずあり得ない。最初に出てくる主語が「私」なのか「あなた」なのかは重要だ。話は逸れるが、主語の省略はビジネスの場では時として致命的なミスコミュニケーションを誘発する。

話の組み立ても日本語では「起承転結」が美しいとされる。最後まで聞いて始めの意味がわかるという美学がある。西洋のコミュニケーション体系では、まず結論を提示しなければ、相手はなかなか理解してくれない。つまり最も言いたいことを最初に言う。プレゼンテーションの構成はこれができなければ失敗。

私は、これらが音楽にも当てはまると考えている。それは次の2点。

一つのフレーズの中で大切なのは、フレーズの最初の音。特に、弱拍からはじまるフレーズのときに気をつけなければならない。誤解の可能性を承知で言うと、弱拍でも最初の音には実はアクセントがついていると思っていた方が良い。歌詞を当てはめてみれば良い。例えば、West Side Storyの「Tonight」。4拍目から始まるメロディーの最初の音には「to-night」の「to」が割り当てられている。次の小節の1拍目の「night」も重要で確かにアクセントがつく。だが、今晩なのか明日の晩なのかを決定する「to」のほうが重要だとも考えられる。もちろん劇と場面の解釈によって変わってくるが。

二つ目は、主題(テーマ)の扱い。例えばソナタ形式で言えば、第一主題と第二主題だ。最初は単純なテーマであり、それらをつなぐ部分が複雑で盛り上がる部分であったりするし、当然展開部が盛り上がったりもする。それでも重要なのは、テーマが最初に出てくる部分で、その曲全体を主張するくらいのエネルギーを注ぐ必要があると思う。つまり、15分のプレゼンテーションをするときに最初に重要なポイントを明確に言う、ということと共通する。

[1] 上海玄論翻訳 日本語における主語の省略

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